子どもにとってのトラウマ体験とは?

教えて相談室

毎年11月は児童虐待防止推進月間です。この機会に
「子どもにとってのトラウマ(心的外傷)体験とはどのようなことなのか?」
「子どもと大人のトラウマ体験の違い」
を、考えてみませんか?

Right Caption
トラウマ体験とは、戦争・性被害・事件・事故・自然災害などによってその人の生命や存在に強い衝撃をもたらす出来事を言います。
Left Caption
現場に居合わせて目撃したときだけではなく、紙一重のところでそれを回避したときにも症状が現れることがあるんですよね。
Right Caption
凄惨な事件/事故現場がTV中継されてゾッとしたり、「自分は紙一重のところで助かってしまった…」「自分は何も出来なかった…」と自責の念を抱くことなどで気持ちがふさぎ込んだり、不眠などの症状が現れることがあります。これらは人間の自然な心の反応で、徐々に良くなっていきます。
Left Caption
でも、トラウマ体験から1ヵ月以上経っても気分が優れない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
Right Caption
それでは、子どもと大人との違いについて考えていきましょう。
Left Caption
子どもも大人と同じじゃないんですか?
Right Caption
子どもは大人(家族)がいて、お世話をしてもらわなければ生き、成長していくことが出来ない存在です。だから、大人以上に家族を失うことの意味が重く、大きいのです。
Left Caption
子どもにとっては「家族の危機、イコール、自分の生命・存在の危機」ということなんですね。
Right Caption
そうなんです。
今回は意外なトラウマ体験例を見ながら、その辺りも含めて考えていきたいと思います。
下のイラストをご覧ください。怪しげな占い師が水晶を売りにきて、子どもがその様子を見聞きしてしまった…というケースです。
謎の占い師
Left Caption
大人であれば水晶を買わせるための脅しだとスルーしますが、子どもだと本気にしますね。そして、家族が病気になる…は家族の生命の危機、つまり自分の生命の危機につながることなのでトラウマになり得ます。さらに、家族が不幸になることは、自分の安心できる場所が脅かされることと同じ意味です。
Right Caption
このように大人目線ではトラウマ体験と思えないようなことでも、子どもにとってはそうである場合もあるんです。そして、子どもならではのトラウマ体験後の行動や症状があります。
赤ちゃん返り
Right Caption
歳不相応の赤ちゃん返りをする場合があります。せっかく外れたオムツ生活に逆戻り…なんてこともあり、親御さんからすれば「なんで?」とガッカリかもしれません。でも、不安感からくる自然なことなので、お子さんを叱ったりせず温かく見守ってください。
Right Caption
トラウマ体験を真似して、ごっこ遊びをする場合もあります。大人からすれば、体験を思い出して良くないのでは?と思ってしまいがちですが、トラウマを乗り越える過程の1つです。やめさせたりせず、温かく見守ってあげて下さい。
Left Caption
トラウマ体験後の行動や症状は、自分の心を守るための自然な反応なんですね。だから、無理にやめさせたり叱ったりすると良くない…と。
Right Caption
その通りです。
その一方、何があったか伝えられず、一人で抱え込んでしまうこともあります。これは、言語未発達で伝えられない場合もあれば、色々と他のことを考え込んでしまって伝えられない場合もあります。身体症状だけが表出して大人からは何があったのか分からないため、特に要注意です。
Left Caption
確かに小学校高学年くらいになってくると「こんなことを言ったら笑われるかも…」「怒られるかも‥」などと思って言えないことが増えてきますね。自分の不安感や恐怖心よりも、自分が話した後のことを心配して話せなくなってしまうのですね。これは、虐待を受けている子どもにも見られることと聞いたことがあります。
Right Caption
保護者や周囲の大人は、その辺りも心に留めておく必要があります。
今回の占い師の例で言えば、お子さんが不安に思っていることを話してくれたら、まずは何がなくともお子さんの気持ちを受け止めてあげてください。決して「あれは水晶を売るために言っている。そんなことも分からないのか」などと言わないでください。むしろ、話してくれてありがとうなのです。
Left Caption
頭では分かっていても不安なときってありますよね。避雷針のある建物の中にいれば大丈夫だと頭では分かっていても、ゴロゴロ・ピカピカ・ドーーンと雷が鳴っていれば怖いとか…。そう、怖いものは怖いんです…!
Right Caption
気持ちに寄り添うことはどんな時でも大切ですが、トラウマ体験後はとくに重要です。きちんと話を聞いてあげて、抱きしめて「大丈夫だよ」と声をかけてあげてください。それが、お子さんにとっての安心感につながります。
大丈夫だよのハグ
Right Caption
また、症状がなくなって安心していたら、突然思い出して再び言い出したりすることもあります。そんなときでも「今も思い出すと怖いんだね」などと、その気持ちに寄り添うことが一番です。「いつまで言ってるの?」などと言うことだけは決してしないでください。例え数年経ってからであったとしても「まだ言ってる」などと、大人の物差しや大人の都合で見ることはしないでください。
Left Caption
自分も子供だった時代があるんだから、子供のことなんて分かるよ!と思っていたのですが、忘れていることも多いですし、何より言われてみないと大人と子どもの立場の違いって認識できないものなんですね…。それから、自分が今まで見てきた風景は、自分だけのものであることも忘れないようにしたいとも思いました。
お子さんのトラウマ体験後に大切なこと

「トラウマ体験に気付いて、ケアする」
・子どもの気持ちを受け止めることが最優先。
・ハグをして「大丈夫だよ」と声をかけてあげる。
・自分の物差し(大人の物差し)で測らない。
・トラウマ体験後の行動・症状などについて正しい知識を持つ。

Left Caption
トラウマ体験後の症状は、PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)の症状に準じます。厚生労働省のウェブページを見るなどして、正しい知識を身に付けましょう。

【厚生労働省|メンタルヘルス|こころの病気を知る|PTSD】
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_ptsd.html

【文部科学省 CLARINETへようこそ 】
第2章 心のケア 各論 3.外傷体験とは
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/005.htm